【婚活小説】 涙のお見合いパーティー

第3話 お料理婚活パーティー

お見合いパーティーに参加してはみたものの、
疲れただけだった。
30人もの男性と1分ずつ連続で話すのだから無理もない。

一度に大勢の人と知り合えると考えれば、
大きな利点かもしれないが、
桃代には人数が多すぎるように思えた。
もっと少人数だったら状況は変わっていた気がする。

テレビを付けてソファーに腰掛け、
スマホのメールをチェックした。
何通か届いていたメールの中に、
今日参加したパーティー会社からの広告メールもあった。

桃代はもうお見合いパーティーは懲り懲りだったが、
お見合いパーティーの広告メールというものを初めて見るので、
興味本位でメールを開いてみた。

近々開催されるパーティーの情報が載っていた。
今日と同じ会場で行わるパーティーがほとんどだったが、
ひとつだけ毛色の違うパーティーがあった。
お料理婚活パーティーというものだ。

参加料が他より高かった。
参加人数も男女10人ずつと少ない。
パスタを作りながらの婚活パーティーと書かれてある。

桃代はそのままスマホから参加の申し込みを行った。
一人暮らし歴は長いので料理はある程度出来る。
なんといっても参加人数が少ないのがいい。
今日みたいなごった返しのパーティーはもう行きたくない。
それに何だか楽しそうではないか。
みんなでワイワイお料理なんて。
中学のときのキャンプ遠足みたいだ。

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会場は普段お料理教室として使われている所だった。
もう男女ぞれぞれ10人ずつぐらい集まっていた。
どうやら桃代が最後らしい。

席についてプロフィール用紙に記入をしようとしたとき、
ボールペンを忘れたことに気づいた。
困った・・・受付に言いに行こうか。

「よかったら使ってください」
隣に座っていた娘がペンを差し出した。
メガネをかけた地味な娘だった。
「ありがとう」
桃代はペンを受け取り、
プロフィールを埋めていった。

開始時間ぎりぎりに来てしまったようで、
まだプロフィールを埋めている途中でスタッフの説明が始まった。
パーティーの順序などを話しているが、
プロフィールを書きながらだったので説明がうまく頭に入ってこない。

「結局どういう順番で進行していくの?」
説明が終わってから隣のメガネの娘に聞いてみた。
「まず男性ひとりひとりと1分ずつ話す自己紹介タイムからスタートして、そのあとお料理です」
典子ちゃんはそう答えた。そういう名前らしい。
「男女分かれて作るの?」
「それじゃ婚活にならないですよ」
「そうだね」
桃代が笑うと、典子ちゃんも笑みを見せた。
おとなしそうな娘だけど、笑うと可愛いかった。

そうこうしている間にパーティーが始まった。
まずは恒例の1分間の会話タイム。

プロフィールを交換して参加男性ひとりずつと話しをした。
今回は人数が少ないから混乱しなかった。
2回目という余裕も加わっているのだろう。

男性参加者10人の特徴をなんとなく理解できた。
その中でも特に印象に残った男性が2人いた。

一人は吉川さんという身長185cmぐらいの爽やかなイケメン。
参加男性の中で群を抜いてカッコ良かった。
他の参加者は冴えない感じの人が多いので、
彼の存在は際立っていた。
ライバルは多いかもしれない。

もうひとりの気になった男は、
悪い意味で頭から離れない存在だった。
前回お見合いパーティーに参加したときも見かけた
あの40歳のキモオタ野郎だ。
また会いましたねみたいなことを薄笑いを浮かべながら言われた。
桃代は適当に話を合わせながら、ひたすら時間が過ぎるのを待った。

キモオタ

会話タイムが終わり、
次いよいよお料理だ。

少し時間があったので桃代はメガネの典子ちゃんを探した。
会場を見渡すと、彼女が隅でひとりで立ているのを発見した。
桃代は声をかけようと近づいていったが、
途中で足を止めた。
典子ちゃんはあの185cmのイケメン吉川さんを、
遠巻きに見つめていた。

「典子ちゃん、いい人いた?」
背後から近づきそっと尋ねると、典子ちゃんは視線を泳がせて、
あたふたした。
慌てすぎてメガネがちょっとズレてしまっている。
どうやら彼女もライバルのようだ。

進行役のスタッフの指示でパーティーが再開された。
お料理教室として使われている所だけあって、
きれいなキッチン台が10個以上並んでいる。
女性陣は各キッチン台に散らばった。
男性陣は各台を順番に回っていくらしい。

お料理の先生が壇上でパスタの作り方を説明する。
女性陣はそれにしたがって野菜を切ったりパスタを茹でたりする。
男性は5分おきぐらいで各台を移動していくので、
ちょっとした補助係という役割だ。

女性が「この野菜を洗っておいてくだい」と指示をだす。
「こんな感じですか?」と男性。
「そう、そんな感じです」
などと言いながら、和気あいあいとみんなでパスタを作る。

味気ない前回のパーティーとは大違いだ。
部活動みたいで楽しい。
最後にはパスタも食べれるし。

桃代のキッチン台にイケメン吉川さんが回って来た。
「よろしくお願いします」と吉川さんが挨拶する。
「こちらこそお願いします」
こんなにきちんと最初に挨拶したのは彼ぐらいだ。
礼儀正しい人なのだろう。
外見だけでなく中身もイケてるではないか。

「ボクは何をしたらいいでしょう」
「じゃあ、これを混ぜていただけますか」
吉川さんは渡されたボールの中の材料を箸で混ぜはじめた。
近くで見るとより一層大きさを感じる。
160cm代の男性参加者が多いため、
彼の高身長はいっそう引き立った。

並んで作業をしているだけでなんだか新婚気分が湧き上がってくる。
こういう人と結婚して、休日に一緒に夕食の用意などできたら、
幸せだろうな。

彼はIT関係の仕事をしていた。
以前はソフトウェアの会社に勤めていたけど、
今は独立して自営業者としてやっているとのこと。
あまり収入は良くないみたいだ。
プロフィールには年収を記入する欄もあり、
確かに彼の年収は参加男性の中では下位の方だ。

「事業を起動に乗せることに一生懸命になっていたら、恋愛や結婚は後回しになってしまいました」
「なんとか起動には乗りましたか?」
「去年ぐらいから収入も安定しだしたから、家庭を持っても養っていけると思います。」
吉川さんは結婚を意識しているらしい。
30代半ばなのだから当然なのかもしれない。
参加男性は33歳~38歳ぐらいの人が多い。
みんな基本的に結婚を考えている人たちなのだろう。

桃代自身ももう30歳だった。
そろそろ結婚しとかないといけない年齢だ。
しかし桃代は漫画ばかり書いてきたから、
恋愛経験がなかった。
だから結婚というよりは、
まず恋愛をしてみたいという気持ちが強い。

真剣に結婚相手を探しに来ている参加男性とは、
そのへんで温度差を感じてしまっていた。
自分は場違いなところに来てしまったのだろうか。
恋愛をしてみたいという動機での参加では、
軽すぎるように思える。

しかも、もともとは恋愛漫画の行き詰まり打破のために
一度恋愛を経験してみようという不純な動機からはじめた取材活動だ。
誠実に受け答えしてくれるイケメンの彼に対しても、
なんだか後ろめたい気持ちが湧き上がってきた。


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