【婚活小説】幻のネット婚活ガールrisa

第6話 まるで逃げ水のように

risaは昨日Yahooお見合いにログインしていた。
暗証番号を入力しようと苦闘していたまさにあのとき、
risaも同時にYahooお見合いにアクセスしていたのだ。

ボクはこれまでにないほどrisaを身近に感じた。
手を伸ばせばもう触れられる場所にrisaがいるような気がする。

さっそく愛を込めたメッセージを書き綴った。
送信ボタンをポチッと押すときはまさに祈るような気持ちだった。
お願いだrisa。
ボクの気持ちに応えておくれ。

メッセージの送信が済むともうあとは待ち続けるしかなった。
会社を早退したせいでまだ外は明るかった。
ボクはアニメのDVDを観て時間を過ごすことにした。
でも頭の中はrisaのことばかり。
2次元の女の子が入り込む余地なんて残ってはいなかった。

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3日が過ぎた。
risaからの返事はない。
ホームページを確かめてみると、
risaがログインしたのは4日前だった。
つまりあれから一度もログインしていないことになる。

ボクのメッセージはまたもや読まれないまま、
宙をさまよっているのだ。
すれ違い続きでいつまでたってもrisaにたどりつけない。
まるで逃げ水のようだ。

夏のアスファルトに現れる幻の水たまりのごとく、
risaは追いかけても追いかけても、
捕まえることが出来なかった。
追いついたと思っても、そこに水たまりはなく、
道路の先を見ると、また遠くに水たまりが見える。

ボクはついに会社を休んでしまった。
もう何に対しても気力がわかない。
今日はどうしても出社するだけのモチベーションがわかなかった。

ボクは部屋で横になり、
天井をぼーっと眺めていた。
目を閉じると太陽に熱せられたアスファルトが見える。
道路の先には逃げ水が発生しており、
そこにはsaraが立っていた。

ぼくはそこまで全速力で駆けていった。
でもそこについた時にはもうrisaも水たまりもそこにはなかった。
すべて幻だ。
ボクはマッチドットコムに入会したあの日から、
ひたすら幻を追いかけてきたのだ。

気が付くとあたりは暗くなっていた。
知らないうちに眠ってしまったようだ。
疲れているのだろう。
会社を休んで正解かもしれない。
ボクには休息が必要だったのだ。

夕食を食べてからボクはパソコンに向かった。
入会しているネット婚活サイトの退会手続きをやっておこうと思った。
今現在6つも掛け持ちで入会してしまっている状態だ。
risaから返事があるかもしれないと思って、
入会したままにしておいたが、
このままでは家計を圧迫する。

一番最初に入会したマッチドットコムから退会手続きにとりかかった。
一応risaの最終ログイン日も確認した。
しかしrisaはあれから一度もログインはしてないようだ。

次に退会手続きを行ったのはエキサイト恋愛結婚。
ここでもrisaのプロフィールを確認してみたが、
やはりログインした形跡はない。

次の退会手続きはyoubride。
やはりrisaはログインしてなかった。

そういえばyoubrideとよく似た名前のブライダルネットにも入会していた。
ここだけはrisaがいなかったのだ。

退会前に一応東京都在住の29歳女性を検索してみた。
たくさんの女性がヒットする。
月額費3000円という安さの割には機能が充実している婚活サイトだ。
人気があるのだろう。

と、
右手にコーヒカップ。左手で頬杖。
そこにrisaの写真があった。
会社の休憩室で制服を着て微笑むrisa。

プロフィールにはお馴染みの紹介文が記載されている。
risaがいた。
僕が入会した後にrisaは入会したらしい。
まるでボクを追っかけるようにして。
ボクがrisaを見つけきれないから、
risaの方からボクを探してくれたんだね。

ごめんよrisa。

最終ログイン日を確認した。
ログイン中の文字が表示されている。

ボクの胸が激しく高鳴った。
ログイン中だと?!
今この瞬間にrisaも同時にログインしてる。
ボクと同じようにブライダルネットのホームページを閲覧しているのだ!

risaは幻などではなかった。
こうしてちゃんと実在していたのだ。
ボクは逃げ水をとらえた。
運命の赤い糸を手繰り寄せて。

これまでの想いをこめてメッセージを書こうとしたが、
ブライダルネットではまず相手に気があることを知らせるだけの
挨拶というものから始めるらしい。
相手も挨拶を返してくれたらメッセージが送れるようになる。
気軽にコンタクト出来るという点では優れたシステムだ。

しかしrisaへの熱い想いを伝えたいボクには、
なんだかまどろっこしいものに思える。
愛してると伝えたい。
君離さないと伝えたい。
君のためなら死ねると伝えたい。

でも制度は制度だ。
仕方がないのでボクはrisaへの挨拶ボタンをポチッと押した。
気があることを伝えるだけの機能ではあるが、
ボタンを押すときは指が震えた。
愛しているのだなとあらためて気づいた。


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